room 103
国立にある古道具店 LET’EM IN(レットエムイン)のギャラリー・イベントスペースの内装プロジェクトです。
展示スペースとカフェの営業をおこなうための厨房スペースによって構成されています。 古いカウンターや建具と新たに製作したファサードの大きなスチールのサッシをデザインのポイントにして、展示されるビンテージ家具・雑貨やアート作品が映えるよう、シンプルに素材を活かしたデザインをおこないました。
その時々のイベントに合わせて什器をレイアウトすることで、様々な表情が生まれるスペースになりました。
大阪・中之島とウツボ公園に囲まれたエリア江戸堀は、古くから商業で栄えた地域で、昨今小さな店舗・カフェ・レストラン・ギャラリーなどが次々とオープンし、新たな活気を帯びています。このプロジェクトは、江戸堀の目抜き通りであるなにわ筋沿いに印刷所の路面店をつくる計画で、2011年秋にオープンしました。
デジタル技術が普及し、印刷はインターネットで発注・入稿することが主流になっています。一方でここ数年の間に活版印刷などの古い印刷技術が再び評価されるようになり、アメリカ・ヨーロッパ・日本では小さなレタープレスの工房が人気を集めています。こうした状況を背景に、印刷でものを作る楽しさを共有し、印刷を身近に感じてもらえる「顔の見える印刷所」をつくること、そしてさらには場所の利便性を活かし、印刷を媒体にしてユーザー・デザイナー・企業・地域をつなげる開かれた場所をつくることがクライアントの希望でした。
約50㎡のスペースに、工房・打合せスペース・小さなギャラリーコーナーを設けています。大きなスチール建具を開けて入ると機械の音が聞こえ、インクのにおいがする。古い印刷機で作業する職人さんの様子を見る。工場に足を踏み入れるという体験は、少しわくわくする特別な出来事ではないかと思い、それを素直にかたちにしたいと考えました。素っ気なく仕上げた間仕切りのないワンルームのスペースに家具を配置して緩やかに区切り、日々の作業、展示やワークショップ、重厚な印刷機と最新のデジタル機器、カラフルな印刷物、数々の材料や道具、昔気質の職人さんと若いユーザーやデザイナーといった様々な要素がフラットに混在する、背景としての空間を提案しました。