国立ハウス 3

RC造の趣を活かす
新築からリノベーションへ

国立駅からほど近い閑静な住宅街。紅葉や百日紅が彩る庭の奥に、赤いポストが目を引く真っ白な建物が立っている。RC造の2階建てをリノベーションしたこの家に暮らすのは、ご夫妻とお子さん二人のTさん一家。家づくりを検討し始めた当初は「リノベーションという選択肢がまったくなかった」とご夫妻は振り返る。 

「分譲マンションに暮らしていたのですが、二人の子どもたちが大きくなってきて、ゆくゆくは個室も必要になるだろうと。広さや間取りを考えた結果、戸建て住宅を新築するつもりで、馴染みのある国立付近で土地を探すことにしたんです」(Tさん)

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なかなか希望通りの土地が見つからない中、不動産屋に紹介されたのが南側の道路に面して庭のある敷地面積120㎡超えの土地。そこには1977年竣工の鉄筋コンクリート造(以下RC造)の住宅が立っていた。

「もともとピカピカした新しさより、古くて味わいのあるものが好き。内見してみたら、リノベーションの可能性もあるかもしれないと思って。でも私自身、建築関係の仕事に携わっていることもあり、古い建物は解体してみないと分からない部分が多いことも知っていました。RC造とはいえ耐震的に大丈夫なのか漠然とした不安もありましたし、何よりリノベーションをしたところで自分の好きなテイストに仕上がるのかどうか確信が持てなかったです」(Tさん)

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工務店など数社に相談していたが、当然のように建て替えることを前提に話が進んでいたという。思うようにいかない家づくりに悩んでいた矢先に、ストレートデザインラボラトリーが設計した家に住む知人から東端さんを紹介された。テイストも好みで早速コンタクトをとったという。

「初めて相談に行った時に取り壊すのではなく、“せっかくなら活かしましょう!”と言ってもらえて。できればそうしたい思いがあったので東端さんの方から提案されたことがうれしかったし、頼もしかったですね。老朽化が懸念されたので一旦フルスケルトンにして躯体の状況を把握した上でプランを考え、もし広さや間取りに不満が残るようだったら再度建て替えを検討する方向で進めることになりました」(Tさん)

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以前の間取りは1階にリビング、ダイニングキッチン、水まわりがあり、2階は四つの個室という構成。建物は壁で構造を支える「壁式構造」で、柱や梁で支えるラーメン構造と比べて間取りの変更に制約があったが、特に問題はなかったという。

「家族それぞれの個室も確保できるし、ほぼイメージ通りでした。家事動線を考慮してベランダのある2階に水まわりを移設した以外に大きな変更はなく、あとは大きな掃き出し窓がいくつもあったので家具を置くことも考えて一部を壁に変更してもらいました」(Tさん)

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唯一懸念されたのがリビングとダイニングキッチンを区切る壁。完全に2部屋に分かれて閉塞感があり、庭への眺望も遮られる。「オープンなLDK」を望む夫妻のために、東端さんは構造家に相談しながら解決策を検討した。

「壁を壊してみると実は大半が空洞で。一部は構造上残さないといけなかったのですが、新しく鉄骨梁で補強することで当初から希望していた一体感のある空間を実現できました。ダイニングで庭の緑を眺めながら仕事もできて、とても気持ちがいいです」(Tさん)

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そのほかの間取りは既存を踏襲しながらも、より快適に暮らせる工夫が施されている。玄関は自転車も置けるゆったりしたスペースがあり、その横に家族4人分のシューズクローゼットを併設。廊下沿いには洗面所を上に移動したことで小さな手洗いスペースを設け、その奥にはファミリークローゼット、パントリーといった収納スペースをまとめた。玄関から手洗い、収納までが動線上につながり、帰宅時や外出時も身支度がスムーズなのだそう。

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2階は当初の計画通り、家族それぞれの個室と水まわりを配置。廊下の余白を活かして小さなライブラリーコーナーが設けられ、引っ越し後にDIYで取り付けた本棚やアート、スツールが置かれて楽しげなスペースになっている。子ども部屋は将来的に2部屋に分けられる仕様で、今はレースのカーテンを仕切りにしながら共有中。天板と脚を組み合わせられるBISLEYのデスクとベッドがシンメトリーに並び、すっきりとした印象だ。

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「インテリアに関しては東端さんに信頼を寄せていたのでほぼお任せで。イメージとしてお伝えしたのは、私が好きな東京・白金にあるアパレルショップの“YAEKA HOME STORE”。既存の痕跡を残しながらも、シンプルでベーシックな空間を提案してもらいました」(Tさん)

上下階共に床はオーク、トイレ・洗面脱衣室・ウォークインクローゼットは清掃性を考慮してリノリウムにし、壁と天井は白く塗装、扉はラワン材を選んだ。キッチンは東端さんの自邸を見て惹かれたというステンレスの天板とラワン材の組み合わせ。壁の一部をタイルにして使いやすい高さに既製品のステンレスバーやSAT.PRODUCTSのラックを設置した。“白と木”をベースに素材の数を絞ることでコストダウンを図りつつ、ところどころ現しにしたコンクリートの壁や、玄関の収納扉を移設したクローゼットなど経年変化による味わいが足され、「ずっと飽きずに過ごせる空間」になった。

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そんな住まいの顔は庭に面したライトグレーのスチールサッシ。キッチンと同じくcampを主宰する大原温さんがデザインしたもので、スチール特有の質感やシャープなフォルムが印象的だ。内側には特注の木製網戸も設置されており、開け放てば心地良い風が吹き抜ける。

「東端さんの自邸のスチールサッシも計画当初から絶対に取り入れたいと決めていました。コストの関係で最終的に一カ所だけになってしまったけど、なんとか死守できて良かったです(笑)。色もえんじにするかどうか悩んだ部分で、最終的にインテリアとなじむライトグレーにして正解でした」(Tさん)

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引っ越しを機にソファを手放すなど、この家に合う家具を見直したというTさん。手元に残ったのは、Borge Mogensenの折り畳みテーブルとシェーカーチェア、Ilmari Tapiovaaraのピルッカチェアといった長年大切に使っている北欧のヴィンテージ家具が中心。温かみのある木の家具に、東端さんがTさん宅に合わせて選んだドイツのLINDNERやRademacherのブラケットライト、Louis Poulsenのペンダントといった工業的なデザインのヴィンテージ照明がアクセントになっている。ほんのりと温かみのある光に照らされた夜の空間も格別だ。

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今回、50年近く経った戸建て住宅のリノベーションということもあり、家全体の性能の向上に加え、メンテナンスは必須だったという。ほぼ皆無だった断熱性能は新たにウレタンフォームを吹き付け、断熱気密性と防犯性の高いサッシに変更。LDK全面に床暖房も完備した。さらに外壁材はひび割れを補修した上で、新しく上から白く塗装。屋根はウレタン塗膜で防水性を高め、安全性を考慮してベランダ周りの手すりもスチールで新設した。目に見えない部分にも手を加えた分、必然的にコストもかかったが「これから長く快適に住んでいくためには必要なことだった」と夫妻は振り返る。

古い家をリノベーションして住み継ぐ。それは新築を予定していたTさん夫妻にとって思いもよらない結果になったかもしれない。一つの運命的な出合いがかけがえのない住まいへと生まれ変わり、これからも大切な家族の時間を紡いでいく。

人生最高のお買い物、その続きのはなし
リノベーション完成に寄せて

お子さんの誕生を機に新築したよしいちひろさんご自宅は、玉川上水にほど近く緑の豊かな環境に建つ一軒家です。10年近くが経過し、家族それぞれのライフスタイルが変化したタイミングでリノベーションをおこないました。よしいさんの家と家族と仕事にまつわる話を、よしいさんによるエッセイでご紹介します。

よしいちひろさん イラストレーター。1979年兵庫県生まれ、東京都在住。女性の憧れや日常を、やわらかくみずみずしいタッチで描く作風が人気を呼び、雑誌や書籍、広告などで幅広く活躍。リラックス感がありながら、エッジのきいたファッションやもの選びにも注目が。
https://chihiroyoshii.com/

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もう10年も前のことなので細かい心情は思い出せないけれど、妊娠したとわかってわりとすぐに、家を建てようと思い立った。自分の中ではきわめて納得した結論だったけれど、夫にとっては青天の霹靂だったようだ。

そのときに住んでいた賃貸の戸建て住宅は料理家のなかしましほさんが見つけてくれたもので、その家主の「好き」が細部まで宿った、今思い返してもすごく魅力ある家だった。ただ築年数が40年近く経ったその家は、台所にナメクジが歩くのを見たこともあったし、網戸の隙間から蚊は入り放題。こういった古い家は小まめなひとでないと快適に住めないんだなと痛感した(そのころの自分は、毎夕仕事が終わると飲みに出掛けてそのまま床で寝ているような、今よりずっと怠惰な生活を送っていた)赤ちゃんを育てるならズボラな自分には新しい家が必要だと思ったのだった。

中古のマンションを見たり、ハウスメーカーを訪れてみたり、色々可能性を探っていたときに東端さんにもコンタクトを取った。straight design labは、国立の馴染みのお店や知人らが自宅や店舗の設計をお願いしていて、真っ先に浮かんだ事務所だった。しかも実は私が高校時代に第一志望にしていた大学(結局入れなかった)を東端さんは卒業していたこともわかって、さらに親しみを感じていた。

何回かメールや電話でやりとりして、でも結局決めた土地が建築条件付き(施工する工務店があらかじめ決められた物件)だったため、東端さんに入ってもらうことは断念して家を建てた。もともとライフステージが変わるごとにリノベーションすることは折り込み済みで家を建てたので、次の機会にはぜひお願いしますと伝えてそのときのやりとりを終えた。

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8年後、予定してたとおり子ども部屋を増やすべく、再び東端さんに連絡を取った。
その頃には共通の友人も出来て、もともと住んでいるエリアが近かったこともあり、東端さんともなんとなくinstagramでお互いの活動を見守る仲になっていた。

2022年の夏。パンデミックで生活が変わって3年めを迎えていた。
私は仕事の面でも、そして家の中でも、思い返してみれば閉塞感を感じていたんだと思う。仕事で新しいことをしてみたくて友人にポロッと話すと「いいじゃんいいじゃん」と背中を押され、私は外に事務所を借りることを決めた。が、理由はそれだけじゃなかった。

これまで10年近く私は毎日ひとりの時間を当たり前に満喫してきた。夫は朝出ると終電まで帰ってこない忙しい会社員をしており、フリーランスのイラストレーターである私にとって自宅は城だった。それがコロナで一遍、毎日、7days24hours、自宅に誰かが居るのだ。正確に言うと、出産後は育児に出来るだけ関わって欲しくて私からお願いする形で、夫は週に1,2回は自宅でリモート勤務をしていた。だから今更「やっぱり会社に出社してほしい」なんて言えず、自分が出ていくしかないと思った。ただ、心の中に秘めたつもりのもやもやはまったく隠しきれておらず、また産後のセンシティブな状態からの延長で、今思い返しても、私は夫に対して日々、相当強く当たっていたと思う。さらにそれは子どもにもしっかり伝わっていたはずだ。

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さて、その生まれて初めて借りた物件は入居5日目に出ることになる。

格安で見つけた古いワンルームマンションはあとから聞くと、昔から近隣の学生たちの下宿として使われてきたようで、びっくりするくらい壁が薄かった。一日目に隣の部屋からノックする音が聞こえた「気がして」いたものが、3日目には唸り声とともに何らかの強い気持ちをこめた殴打の音に変わっていた。恐ろしくなった私は即座に家を飛び出して、マンションの外から管理会社に泣きながら電話をしていた。

そんなわけで結局、リノベーションのプランも立て直してもらうことになってしまった。

依頼当初には部屋をひとつ増やすだけだったプランは、最終的に3つの部屋を増やすことに。
息子の部屋、夫のワークスペース、私のワークスペース。

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2024年の1月に発売されたBRUTUSの記念すべき1000号、タイトルは「人生最高のお買い物。」
BRUTUSにゆかりのある100人が「人生ベストバイ」を挙げる企画に、光栄にも声を掛けていただき私もひとつ挙げさせてもらった。それが今回リノベーションで私のワークスペースに付けてもらったドアハンドル。ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがデザインしたそれは東端さんが選んでくれた。

誌面ではどうしてそれが人生最高の買い物になったのか、深くは触れなかったけれど、私にとってこのリノベーションは、家族との不調和を変える大きなターニングポイントになった。

夫も私も気持ちよく毎日を過ごせるようにどんなプランにするかは、東端さんの公私ともにパートナーである大原さんにも来てもらって、それぞれが納得できるまで話した。

ちなみに私には私の気持ちや考えがあるように、夫にもそれがあるということを気付かせてくれたのは、例の壁ドン事件の隣人だ。私には私の立場があったように、彼女には彼女の立場と考えがあった。東端さん、大原さんと話す以外にも、夫ともかなりたくさん話をした。

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最終的に、新築時に子ども部屋と夫婦の寝室に分けるつもりで作った1階の大きな寝室は、クローゼットを半分潰した上で、子ども部屋・夫婦の寝室・夫のワークスペースに(前のふたつは限られたスペースを有効に使うために一部の空間を縦方向半分に分けた。後の2つは大きな引き戸を間仕切りにしているだけなので後々ひとつの部屋としても使える仕様)。2階のリビングは押入を潰して、その倍くらいのスペースを腰壁とガラス戸で区切り、小屋のようなものを設計してもらった。ちなみに潰したクローゼットや押入の中身は、洗面所前の通路スペースにウォークインクローゼットを作ってもらって、そちらへ。

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施工もわりと思い出深く、住みながらの工事だったので、2階のリビングは一時期キャンプサイトのようなありさまで(飼っていたハムスターのストレス軽減を優先して最短で工事を終わらせたかったこともあり)1階の大工工事が終わったと言われば夜のうちに家具をすべて移動し、大工さんが休む週末のあいだに自分たちでオイル塗装をし…と、毎日がお祭り騒ぎだった。お祭りが好きな自分は慌ただしいながらも楽しい数日間だった。(まあまあ大規模なリノベーションも、敏腕の大工さんたちのおかげで1週間足らずで全ての行程を終えた)

一見ちょっと強面の大工の川崎さんが、息子のベッドスペースに余った木材で本棚を置くためのちょっとした段差を作ってくれたり(私の知る限りの大工さんはみんなものづくりが好きだ、パパッと気の利いたものをそのへんに転がってる材料で作ってくれる)色々親切にしてくれたのも、心温まる思い出だ。

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東端さんを始めとするたくさんの方の助けがあって、大満足のマイホームに仕上がった。
「3回建てないと理想の家は建てられない」
なんてよく言うけれど、そんなことはないって今回思った。
住みながら少しずつ、そのときの気分や生活にフィットする改修を行えばその都度理想に近づけられるし、何よりも愛着は増す一方だ。

家族の雰囲気もおそらく前より良くなったと思う。
そこまで突っ込んで話す勇気がなくて、夫にその話をしたことはないけれど。

なんだか普通のリノベーション以上の、人生の一大イベントを引き受けてくれて、東端さん、本当にありがとうございました。また次もぜひお願いします。

ビンテージマンションを住み継ぐ
物件が持つ物語を紡ぐリノベーション

築50年越えのマンションの一室を彩るのは、世界各国から集められた家具や雑貨たち。モロッコで手に入れたというカラフルなラグに、ボーエ・モーエンセンのデイベッドやフランス製の古いテーブル、近所のガレージセールで出会ったキャビネットにチェア。キッチンのラックにはヨーロッパやアジア、日本の各地で買ったという色とりどりの食器が並べられ、棚には旅の思い出の雑貨がずらり。天井や壁を彩るのは、個性的なフォルムやビンテージな佇まいの照明。そして、そこかしこに飾られたグリーンたち。さまざまな地域と時代がミックスしたインテリアが、時を忘れるようなリラックス感を生んでいる。

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「掘り出し物を探すのが好きなんです。物が綺麗に並べられたお店よりも、ガレージセールとか蚤の市のように物が溢れかえったところから、お気に入りを見つけ出すのが楽しい。いつでも行けるお店で見つけた物だったら悩んでしまうと思うのですが、海外で出会う物たちはいつも一期一会。“今、買わなきゃ!”と勢いで買ってしまいます(笑)」

そう話すのはフォトグラファーの浜村菜月さん。夫と愛猫のまきゃべりくん・どきどきちゃんと暮らす住まいは、ル・コルビジェの流れを汲む有名建築家の設計のもと建てられた、いわゆるビンテージマンション。アーティスティックな外観や共用部、大きな窓や広いバルコニー、住戸内のディテールも個性的で、デザイナーズ物件の名作として知られる建物だ。浜村さんがこのマンションの部屋をリノベーションするのは実は二回目。ストレートデザインラボラトリーとリノベーションした『原宿フラット』から、マンション内で住み替えをした。

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「ある日、マンション内の住人に、『この部屋を買いませんか?』というチラシが配られたんです。前オーナーはこのマンションに他にも部屋を持っていて、その部屋を不動産屋に売った時、よくある普通のマンションのような内装にリフォームされて、再販されたその部屋を買った人もすぐに売却してしまったそうなんです。そんなことがあって、もっとこのマンションに愛着を持ってくれる人に住んで欲しいと、今回はマンション内の住人に声をかけたそうです。このマンションは、ここを好きな住人ばかり。古いので不便もあるけれど、修繕を重ねながら暮らしている。そうやって長く愛され続けていることが、この建物の価値だと感じています」

歴代の住人たちが大切にしてきたものを尊重する。そのスタンスは、新居のリノベーションにも反映された。リノベ前の部屋は、竣工当時の建具やパーツを残しつつ、DIY好きの前オーナーによる改装が加えられており、「味のある空間だった」と浜村さん。3LDKだった間取りを1LDK+ワークスペースに大きく変える以外は、“活かせるものは活かす”スタンスでリノベーションを行っていった。

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「この部屋はもともとアイランドキッチンになっていて、それが良かったので真似をして作り直しました。キッチンを支える脚は既存のキッチンについていたものを再利用しています。背面側はカウンター収納があったのを撤去して、真ん中にカウンター台を作り、左右は隠せる収納にしました。ベンジャミンムーアの塗料でブルーに塗った壁に取り付けたTse&Tse associeesのインディアンキッチンラックは、『原宿フラット』から持ってきたもの。もうひとつ買い足してコレクション皿の収納量をアップさせました」

赤みがかかったフローリングは、前住人が自ら買い付けして張ったという無垢の南洋材をそのまま利用した。サンダーで研磨してフローリングに付いていた傷をなくし、オイルを塗り直している。床は面積が広い分、すべてを新しく仕上げ直した場合は結構なコストがかかるが、メンテナンスを重ねれば長く使うことができる無垢材だったからこそできたコストダウンだった。

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「リビングの一角には、私のワークスペースもつくりました。このワークスペースは、デスクと壁が一体になったブースになっていて、背面側の本棚とつなぐパーツで倒れないように固定されています。ワークスペースの配置をなかなか決められなかったので、位置を変えられるようにしてもらいました。デスクにいる時、後ろ側を夫が行き来すると気になるので、背中側が棚になるようにレイアウトしています。現在の位置が気に入っているので今のところ動かす予定はありませんが、動かせるとわかっているので、将来のレイアウト変更を考えるのも楽しいですね」

雑誌や書籍、旅先で集めたコレクションが飾られた棚の前は、夫のリモートワークスペース。造作した棚の一部にはフローリングパネルが差し込まれ、愛猫たちのキャットステップになっている。このスペースの隣は前住人によってガラス屋根が架けられたテラスがあり、浜村さんご夫妻はそこで友人とお酒を飲んだり、ホットプレートで焼き肉をするなど、アウトドアリビングとして楽しんでいるという。

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「バスルームとサニタリーももともとの空間を活かしていて、バスタブは既存のもの。壁と床はカラフルなタイル張りだったのを、モールテックスというモルタル調の左官材を上から塗り重ねています。特徴的な形をしたドアやドアハンドルなど、竣工当時からあるパーツも残してもらいました。寝室は間仕切り壁をつくり直したのですが、もともとのドアを再利用するだけでなく、大工さんがドア枠の造りも再現してくれました」

古い物件で、さらに幾度も改装が重ねられてきていたため、バスルームとクローゼットの照明の電気配線がつながっているなど、工事を進めていく中で予想外の事態に遭遇することもあったという。既存を活かすリノベーションは、壊す箇所・壊さない箇所、捨てるもの・捨てないものを細かく判断して、解体や施工の際はそれに留意しなければならない。一旦すべての内装や間仕切り壁を撤去して、スケルトン状態から空間をつくり直していくほうがスムーズな場合もあるが、「もともとを活かしたリノベーションのほうが、歴代の住人に愛されてきたこのマンションらしい」という想いのもと、空間づくりを進めていった。

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「照明にはこだわりました。スイッチやブラケットライトはベルギーの『zangra』というインテリア雑貨のお店から個人輸入したもの。シンクの上とダイニングテーブルのペンダントライトは京都の『ARUSE』で、リビングのものは目黒の『Pocket Park』で見つけました。ダイニングテーブルは、なかなかこれだ!と思えるものが見つからなくて、SAT.PRODUCTSに製作してもらったオリジナル。天板はリクエストしたリノリウム張りで、スチールの脚は玄関ドアと同じマスタード色にしてもらいました。この部屋ができてからから一年ぐらいかかって、今のインテリアに落ち着きました」

そうして完成した空間は、浜村さんが選び抜いた照明や家具、旅先から集めてきた雑貨で彩られることで、すっかり“浜村さん色”に染まっている。特に照明は、ベースライトとして天井に取り付けたボール電球のほかは、場所ごとに異なるデザインのペンダントライトやブラケットライト、電球を使い分けて、広いLDKの中にコーナーをつくり出している。

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「せっかく広い家に住み替えるので、細かく仕切るよりも広々とした空間にしたかったんです。仕事柄、ハウススタジオの広さに慣れているということもあるかもしれないけど、やっぱり広いのは気持ちがいい。物が見えている方が好きなんですよね。旅先で見つけたものは別ですが(笑)、出会った時に“あそこに置けるかも”というイメージがぱっと思い浮かぶものだけ買うように心がけています。あと、家具を置く時は、床に間を開けてコーナーごとにまとめることも意識しています」

窓のデザインや端々に残されたディテールから感じられる、築50年を経てもなお新鮮さを覚えるデザイナーズ空間に、異国情緒溢れる浜村邸のインテリアはよく似合っている。建物本来の個性と、前住人が残したものと、それを下地にして浜村さんがつくり上げたもの。物語を積み重ねて出来上がった、この物件だからこその空間。こんな家づくりができることも、リノベーションの醍醐味だろう。

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家でのんびり過ごすのが心地いい
「普段着」のような質感のワンルーム

30代のIさんがリノベーションしたのは、山手線駅から徒歩圏内にある築50年のマンション。約43㎡のワンルーム空間を構成しているのは、適度に節が入ったオークのフローリング、コンクリート躯体を直に塗装した壁天井、ラワンで造作した建具、合板で作った台に天板を乗せたシンプルなキッチン。ざっくりした素材たちでつくられた空間はおおらかな雰囲気で、“気負わずに着られる普段着”のような印象だ。

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「ひとり暮らしを始めて以降、“休日を家で過ごしたい”と思える家に住んだことがなかったんです。これまでに暮らしていた賃貸の家は、狭かったり西日が強かったりで家にいるのが嫌で、平日の仕事で疲れているにもかかわらず、休日は必ずどこかに出かけていました。この家は、ずっと家で過ごしていても楽しい。“週末は家でのんびりする”という習慣ができました」

Iさんが以前住んでいた賃貸アパートは、ベッドとテレビを置いたらいっぱいになるような部屋だったそう。通勤に便利な立地は気に入っており、同じエリアでマンションを買うことを漠然と考えていたところ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でリモートワークになったことが、住宅購入へのモチベーションを後押ししたそうだ。

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「最初はリノベーション済み物件を見ていました。1軒目に内見した物件がとても良かったんですが、他を見ないで決めていいのかな? と躊躇っていたら売れてしまって。その後もいくつかのリノベーション済み物件を見たんですが、何かと部屋を仕切ろうとする間取りばかり。私はワンルーム空間で良いし、40㎡ぐらいは広さが欲しいと思うとなかなか物件がなくて。リノベーションするのもアリだな、と考え始めたところで、この部屋を見つけました」

南向きの窓からは燦々と光が注ぎ、明るく開放感を感じる住まいだが、以前の間取りは2DKで、造り付けの収納が多く圧迫感のある空間だったという。ワンルームにリノベーションされた住まいは、玄関から窓辺まで空間がつながり、ベッドスペースは胸高さのパーティションで緩やかにゾーニングした。この木製格子のパーティションは、Iさんのご友人が購入した古いマンションで建具として使われていたもの。ご友人が家をリノベーションした際に使い道がなく保管していたものを譲り受け、パーティションとして再利用した。

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「もし将来、家族が増えたら、とも考えましたが、“今の自分”にピッタリくる家にしたいなと思いました。寝室は閉じたくないし、移動のたびにドアを開け閉めするのも面倒なので、建具も極力付けませんでした。なるべく空間をすっきりさせたかったので、収納もキッチンも壁に寄せています」

ベッドスペースの壁側は一面の収納を造作。ラワン合板で作った引き戸は一枚が幅100cm、高さが220cmと大判で、建具と言うよりも板壁のような存在感で空間をゆったり見せる効果を生んでいる。大容量のこの収納には、衣服に書籍、寝具や季節用品など、あらゆるものを収納。大判の引き戸は開けると中の収納が一覧しやすく、Iさんは普段は開けっ放しにして使っているそうだ。

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生活感が露出しがちなワンルーム空間を整える仕掛けはキッチンにも。エントランスホールとキッチンのあいだにパントリーを造作し、オーブンレンジや食器、食材はここに収納。リビングダイニングとベッドスペースからのキッチンの眺めをすっきりさせた。キッチンの壁面に縦貼りした白タイルは凛とした佇まいで、おおらかな雰囲気の空間のアクセントになっている。造作したキッチンのサイズは、ひとり暮らしにしては幅広の250cm。Iさんはこのキッチンで、日曜日はお弁当用の作り置きを作っているという。

「一週間分のお弁当のおかずを6種類くらい作っています。以前は一品一品作っていたけど、火力が強い3口コンロを入れたのと、ダイニングテーブルも作業台として使えるので、複数品目を同時に作れるようになりました。疲れたらリビングで休憩して、またキッチンに戻って、とのんびり作業しています」

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そんな週末の過ごし方に加え、「お風呂にゆっくり入るようになったこと」もこの家に暮らし始めてから変わったことだとIさんは話す。躯体のコンクリート壁に囲まれていたバスルームは壁を壊して広くすることが難しく、極小のユニットバスしか入らないサイズだったため、床と壁をタイルで仕上げ直して、床面が広く見えるように置き型のバスタブを採用した。

「以前はお風呂に入ることを面倒だと思っていたんですが、今はバスルームがかわいいので積極的に入るようになりました(笑)。バスルームに使ったタイルは、水彩絵の具を塗ったような淡いブルーが気に入りました。水垢がついても目立たなそうというのも選んだ理由。洗面とキッチンのタイルはこれの色違いです。カタログに載っていた施工イメージ写真は横貼りだったんですが、ストレートデザインラボラトリーとの打ち合わせで、縦貼りにしてもすっきりした印象になっていいねという話になり、こうしました」

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洗面出入り口は、明かりを取り入れられるよう磨りガラス入りのドアを造作。ヴィンテージな鍵付きのドアノブは、ストレートデザインラボラトリーがストックしていたもの。鍵は差しっぱなしにして、インテリアにしている。洗面室とホールの床はフレキシブルボード貼りで、土間のような雰囲気を持ちつつ、床下のメンテナンスが必要になった時に取り外しできる利点もあり、採用された。ホールの壁のウォームグレーはIさんが選んだカラー。この壁を含む壁と天井は、Iさんとご友人がDIYで塗り上げた。

「友人の家のリノベーションで塗装を手伝ったことがあって、塗装なら自分でできる!と思ってやらせてもらいました。どこをどう塗るかは、ストレートデザインラボラトリーと一緒に現地で空間を見ながら決めていきました。色を決める際は、サンプルの塗料を塗った板を壁に当てて、色の見え方を確認していきました」

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コンクリート躯体現しの表情を残して塗装された壁天井と、天井を走る今は使われていない暖房設備のパイプ管。この空間のざっくりとした印象を際立たせているこれらを生かすために、天井付けの照明は数を絞り、壁付け照明をメインにした。夜はスポットごとの明かりがワンルームの中に陰影をつくり、一層親密な空気感を生み出すのだろう。忙しい平日の夜も穏やかな気持ちで過ごすことができそうだ。

「コンクリート躯体現しの表情を生かしたいと思っていたんです。ストレートデザインラボラトリーからは、お店やオフィスと違って、住宅では照明の明かりが欲しい場所は大体決まってくると聞いて、ライティングレールを使わず照明を付ける場所を絞りました。リビングのアームライトは京都のアンティークショップで選び、洗面室やホールのブラケットライトは友人が教えてくれたベルギーのネットショップで買いました」

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古い建物ならではの質感を生かしつつ、今の自分に必要なものだけを足してつくった空間。そこを彩るのは、Iさんが初めて一人暮らしを始めた時から使っているという京都・二葉家具のコンパクトソファや、色とりどりのファブリックやスツール、窓辺に気ままに置かれたグリーンに、壁の電線管をクリップ代わりにして飾られた雑貨。「家で過ごしたいと思えなかった」というかつてとは異なり、今の住まいを気負いなく楽しんでいるIさんの暮らしぶりが窺える。

「振り返ってみると、今までの家は立地や家賃を優先して選んでいて、“住みたい空間”という視点で選んだことがなかったんですよね。“賃貸だから”とはじめから諦めていたところもあるかもしれません。この家は陽当たりも窓からの眺めも良いし、住み始めたらサイズ感もちょうど良くて、今の暮らしをとても気に入っています」

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猫と、旅と、くつろぎと。
「好き」に囲まれて暮らすカラフルな部屋

賑やかな原宿の街の奥にひっそりと佇む、築40年越えのヴィンテージマンション。その一戸をリノベーションして暮らすのは、フォトグラファーの浜村菜月さん。燦々と光が差し込む窓辺に“小上がり”ならぬ“小下がり”を設けたリラックス感溢れる住まいを、浜村さんによるお写真と文章でご紹介します。

浜村菜月さん フォトグラファー。2014年に独立。現在は女性誌や書籍の撮影を中心に活躍中。 2015年10月よりマンチカンの“まきゃべり”を飼い始める。猫を可愛く撮る、プロならではのテクニックやSNS映えするアイデアを多数紹介した『猫と楽しむニャンスタグラムのすすめ LET’ S ENJOY CAT×Instagram』(インプレス)が発売中。まきゃべり専用インスタも人気。Instagram:machiavelli_y

 

#猫との暮らし

straight design lab | harajuku flat

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我が家は、私と夫と猫のまきゃべり(♂)の3人家族。

まきゃべりとの出会いは、以前住んでいた家の向かいにあったペットショップ。ウィンドウにいた彼の存在に気づいてからというもの、お店の前を通るたびに外から眺めたり、ちょっかいを出したりしているうちにすっかり情が湧いてしまい、我が家の一員になりました。

名前はイタリアの政治学者で『君主論』を書いたニッコロ・マキャベリから。響きが面白いのと、試しに姓名判断してみたら、ひらがな表記の“まきゃべり”が大吉だったので。

まきゃべりは我が家の“君主様”。彼のために、リノベーション後の住まいは扉をできるだけ少なくして、家の中を自由に行き来できるようにしました。

彼のお気に入りの場所は、外が眺められる窓際。上からも下からも開閉できるロールカーテンにして、光をたくさん取り入れられるようにもしました。爪痕がつきづらいようにフローリングは硬めのオーク材を選びましたが、まきゃべりの足の負担が減るように、ラグをたくさん敷いています。

リビングのテーブル天板に使ったtoolboxのパーケットフローリングの余りで作ったキャットステップもお気に入りの場所のひとつ。私の仕事場の椅子も、彼のまどろみスポットです。

#リラックス

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お気に入りのラグを敷き詰めた“小下がりリビング”は、リラックスのための場所。まきゃべりと遊んだり、映画を観ながらゴロゴロしたりしています。

“小上がり”ならぬ“小下がり”になったわけは、マンションの造りが、床に梁がある“逆梁方式”だったから。リノベーションではよく「天井を上げる」と聞きますが、これは梁の下に貼られた天井板を取り払って、梁以外の部分の天井の高さを上げる方法。逆梁方式の我が家では天井が上げられなかったのです。

ならば床は下げられる?と思いつき、少しでも部屋が広く感じられるよう、もともとあった床板を取り払って、リビングを小下がりにしてもらいました。

小下がりの幅に合わせて作ったテーブル天板をはめ込めば、ダイニングに早変わり。友人が遊びに来た時はここで食事をしたり、ゆっくりお酒を飲んでいます。初めて来た人も「居心地がいい」とゴロゴロしてくれる、自慢のリビングです。

寝室はクローゼットと寝るだけのシンプルな空間に。サニタリーはほかの部屋とは気分を変えて、名古屋モザイクのマットな質感のモザイクタイルを選びました。鏡はPACIFIC FURNITURE SERVICE、洗面器はDURAVITのもの。タイルに合わせて、クラシカルな雰囲気のあるものを選びました。

#キッチン

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Tse&Tse associeesのインディアンキッチンラックは、絶対に使いたいと決めていました。キッチンそのものはできるだけシンプルにしたかったことと、部屋が広くないので、壁付け型に。キッチンの面材はラワン合板で仕上げて、PACIFIC FURNITURE SERVICEの壁付け照明と、白い二丁掛けタイルをポイントにしました。

吊り戸棚や引き出しなどの収納は、たくさん作ると部屋に圧迫感が出てしまいそうだったのでなるべく作らず、調味料や調理器具は買い集めているカゴに収納。冷蔵庫やオーブン、ストック食材など、あまり表に出したくないものは、リビングダイニングから死角になるように設けてもらったキッチン奥の収納にしまっています。

インディアンキッチンラックに並べたカラフルな食器たちは、旅先の思い出として買って来たもの。フランス、イタリア、イギリス、ポルトガル、ロシア、モロッコ、タイ、台湾、北欧、国内では沖縄、益子、石川県や九州など。蚤の市などで掘り出し物を探すのが楽しくて、旅に行く度に増えていきます。旅先からの持ち帰りと使いやすさも考えて、軽さを重視して選んでいます。

#旅とインテリア

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旅先の蚤の市やお土産屋さんで見つけてきた雑貨たちは、SAT. PRODUCTSのブラケットで作った飾り棚に。最近は国内の民芸品も集めるようになりました。最近、シンガポールから仲間入りしたばかりの猫の置物は、妙に味のある表情をしていてお気に入りです。

ダイニングテーブルはH.P.DECOで見つけたフランスのヴィンテージ。窓辺に置いたHONORÉのローチェアは、まきゃべりのお気に入りの寝床のひとつです。

PASS THE BATTONで見つけたハンモックもフランスのヴィンテージで、国内で売っているものではあまり見かけないマドラスチェックが可愛いなと思って購入しました。

クッションはタイ、シンガポール、フランス、イタリア、モロッコ、タイ、インドなど旅先で。カラフルなものや柄ものが好きなのですが、クッションは白が入っているものを選ぶルールを設けて、コーディネートに統一感が出るようにしています。カーテンなど、大きい面積を占める布ものも白にしています。

部屋のいたるところに敷き詰めているラグは、モロッコで買った“ボシャラウィット”。ボシャラウィットはハギレや古着を使って織られたモロッコのラグのことで、地域によって色も柄もさまざまななので、探すのも選ぶのも楽しいです。どれも個性があってお気に入りですが、まだ日の目を見ずにいる出番待ちのラグも何枚か…。

#リノベーション

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このマンションに決めた大きな理由は、日がたくさん差し込む大きな窓と、住んでいる人たちが愛着を持って暮らしていることが、管理状態の良さから感じられたから。

以前、住んでいたのは、同じく原宿エリアにある広めのワンルーム。私がカメラマンとして独立して家で仕事をするようになり、仕事をするスペースと生活をするスペースを分けたいと思うようになったことが、住み替えのきっかけでした。

この街が気に入っていたので近所で物件を探したものの、思うような物件はなかなか見つからず…。周辺には築40年を超える古いマンションが多かったこともあって、自然と“中古マンション+リノベーション”を考えるようになりました。

雑貨が好きで、服も靴も好き。当初から空間自体はシンプルで、旅先で買い集めたものたちが映えるような部屋にしたいと思っていました。たくさんの設計事務所のホームページを見る中で、ストレートデザインラボラトリーに出会い、シンプルかつ洗練されている設計に惹かれました。細かいディテールまで好みでしっくりきたことも、設計の時にストレスなくコミュニケーションが取れそうだと思って、リノベーションをお願いしました。

夜な夜な世界中のインテリアサイトを巡っては、イメージを膨らませたり悩んだりしたことも、今ではいい思い出です。たくさん悩んだけど、とても楽しい時間でした。

壁を塗ったり、フローリングにオイルを塗ったり。友達に手伝ってもらってDIYにもトライしました。小下がりリビングのテーブル天板もDIYです。自分で手をかけることで、部屋への愛着がどんどん湧きました。

もともと、家で過ごす時間が大好きな私。旅の思い出に囲まれながら、愛するまきゃべりとまったりできる理想の家をつくることができて、とても満足しています。

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色、素材、かたち。
心地よさを五感で感じる、モノトーンの家

間取りを劇的に変えることだけが、リノベーションだろうか。もともとの間取りでも、家族構成やライフスタイル的に不便はない。でも、もっと自分たちに心地のいい空間にしたい。間取りは大きく変えずに、空間の質をつくり変えることができたら。そんな、リノベーションによる家づくりの可能性を示唆してくれるのが、『国立フラット』だ。

straight design lab | kunitachi flat

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『国立フラット』に暮らすのは、木工作家の西本良太さんとグラフィックデザイナーの葉田いづみさんご夫妻、そして4歳になる息子さんの3人家族。1981年築の「壁式構造」のマンションで、1階住戸、75㎡、3LDKの物件を中古で購入し、リノベーションした。壁式構造の建物は、柱や梁ではなく、壁が建物の荷重を支える造りになっているため、ほとんどの間仕切り壁は撤去ができない。そこで、間取りはそのまま、各部の仕上げや設備、家具に用いる素材や色を整えることで、空間の佇まいを一変させた。

「必要だったのは、子供部屋と夫婦の寝室、そして私の仕事部屋。なので、間取りがほとんど変えられなくても問題はありませんでした。キッチンが独立していることも、生活感があまり露出しないので、自宅で打ち合わせをすることが多い私の仕事的には都合が良かったんです」(葉田さん)

straight design lab | kunitachi flat

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玄関を構成するのは、芦野石の床、白く塗装したラワン合板の扉と白い人工大理石の天板で造作されたシューズボックス、グレーがかった白ペンキで塗り上げられたラワン合板貼りの壁天井。芦野石の床はそのままリビングダイニングへと続き、グレーに塗られたラワン合板の床に切り替わる。リビングダイニングの壁天井も白く塗装されたラワン合板仕上げ。一面だけ躯体現しにされたコンクリート壁がアクセントになっている。

「前に住んでいた家でもグレーに塗った合板を床に敷いていました。それを見たストレートデザインラボラトリーの東端さんが気に入ってくださって。合板を貼って塗装するという床の仕上げ方は、板が反ってしまったり塗装が剥がれる可能性があるので、設計士側からはなかなか提案しにくい方法らしいのですが、7年以上暮らした我が家の床の状態が良かったこともあって、この家も同じ床にしようというところから、空間づくりが始まっていきました」(葉田さん)

straight design lab | kunitachi flat

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キッチンもモノトーンで統一。床は白系のPタイル、壁はグレーの100角タイルという、昔から水回りに多用されてきたスタンダードな素材を用いながら、オールステンレスのオリジナルキッチンで空間にシャープさを演出。一方、洗面室は、ベーシックな色と形ながらサイズ感が珍しい200角の白タイルを壁に貼り、一部の壁は白ペンキで塗装したコンクリート躯体壁として、素材のコントラストが楽しい空間に仕立てている。

白からグレーのグラデーションで整えられた空間は一見シンプルだが、光を受けた時の表情、手足に触れた時の感触、音の響きなど、さまざまな質感を持つ素材たちが五感を通して感じられ、その刺激が心地よい賑やかさを空間にもたらしている。

straight design lab | kunitachi flat

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「床に敷いた芦野石は、採掘どころである栃木に行った時に芦野石で作ったコースターに出会い、その時からいつか何かに使いたいと思っていた素材でした。シューズボックスは、ラワン合板と人工大理石を組み合わせたら面白いかなと思って。壁の一部をコンクリート躯体現しにしたのは、ストレートデザインラボラトリーからの提案でした。僕の作品を家で撮影することがあるので、いろんな背景があったほうがいいだろうという配慮からでしたが、おかげで空間にメリハリが生まれました」(西本さん)

“木工作家”という肩書きながら、木だけでなく、プラスチックや金属など、さまざまな素材を用いてプロダクトづくりに取り組んでいる西本さん。安価な材料であり、内装仕上げ材として使われることは少ないラワン合板と、高級キッチンなどに用いられる人工大理石を組み合わせるというアイデアは、西本さんらしい発想だ。

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一方、グレーを空間の基調にすることは葉田さんの意向からだったが、そこにはグラフィックデザイナーとしての葉田さんのスタンスも感じ取れる。葉田さんが手掛けているのは、主に本。その本がテーマとするものや著者のメッセージを、いかに明確に伝え、共感を誘うかがデザインのポイントになるだろう。物質としての「本」と「テーマ」の関係を住まいに置き換えるとしたら、「空間」と「暮らし」。空間がやたらに飾り立て主張するのではなく、主題である「暮らし」の背景としての空間という認識が、『国立フラット』のデザインの要になっているのではないだろうか。

「無垢の木で作ったものだったり、漆喰だったり、それ自体は嫌いではないんですけど、ナチュラルさを前面に押し出したテイストは、個人的にあまり好きじゃなくて。モダンデザインも好きですが、ここはギャラリーではなく、生活をする家。そういう私たち夫婦の好みに共感してくれそうだなと思ったのが、ストレートデザインラボラトリーだったんです」(葉田さん)

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色や素材だけではない。細部の納まりにも気を配り、空間の形を整え直していることも『国立フラット』の特徴だ。マンションリノベーションでは「天井を少しでも高く」という要望から、天井板は撤去され、躯体現しの直天井になることが多い。しかし『国立フラット』は、ラワン合板を貼って白く塗装した吊り下げ天井。壁と天井の見切り部分は、施工の際の誤差に考慮して設けたわずかなスリットが隅を強調し、それぞれの面を引き立てている。

straight design lab | kunitachi flat

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「直天井にすると、照明を取り付けるために配線ダクトレールを天井に設置することになりますよね。それがあまり好きじゃなくて。空間の隅が見えるようにするのも、設計で配慮してもらったことですね。床や天井の隅が見えると、空間がすっきり見えるんですよ」(西本さん)

西本さんのそうした考えは、家具のレイアウトにも反映。リビングのコンクリート壁に取り付けたヴィツゥの「606 ユニバーサル・シェルビング・システム」のシェルフは、床の隅が見える高さに設置。TVまわりのAV機器も床置きを嫌い、専用の壁付けシェルフを西本さん自ら造作。普通の人なら気にもかけないような細部の形や見え方にまで気を配るところに、夫妻のデザイナーとしての意識の高さがうかがい知れる。

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「なるべく床にものを置かないというのは私の昔からのこだわりでもあって、理由は掃除をしやすくしておきたいから。でも、部屋が片付いている片付いていない以前に、空間そのものがすっきりきっちりしているから、気持ちがいい。スケルトンにしていちから空間をつくるリノベーションも面白かったかもしれませんが、今ある空間を素材と形でデザインするやり方は、私たちに合っていたように思います」(葉田さん)

「デザインのいいプロダクト」とはどんなものだろうか。使いやすいだけでなく、その姿からも心地よさを感じられること。そして、そのもの本来の用途における満足を越えて、使う人に豊かさを提供できること。『国立フラット』は、そこに住まう家族の豊かな暮らしのイメージを喚起させる、名プロダクトだ。

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家具好き、もの好きな住まい手の 
今とこれからをボーダーレスに受け止める空間

「この家に暮らし始めて、カフェに行く回数が減りましたね。出掛けていても、“家に帰って、コーヒーを飲もう”って」。文京区内にある築30年、61㎡のマンションを購入し、リノベーションした I さんは現在29歳。10代の頃から住宅雑誌やインテリア雑誌を読み耽り、自分好みの家をつくることを長年夢見て来たという。ストレートデザインラボラトリーへの依頼のきっかけは、同社が設計した『国立ハウス』を雑誌で見て。「どんなテイストにも偏らない、ニュートラルなデザインに魅力を感じました」と話す。

straight design lab | koishikawa flat

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「昔からインテリアが好きで、ミッドセンチュリーからアンティーク、インダストリアル系、そして今は北欧ナチュラル系といった嗜好遍歴を経てきました。気に入って手に入れたものなので、嗜好が変わったからといって手放すのではなく、今でもそれらの家具を使い続けています」。そんな I さんが求めていたのは、これまで収集してきた多様なテイストの家具と、今後も変わっていくだろう自らの嗜好を受け入れてくれる空間。 同時に、長年思い描いて来た理想の空間についての構想を叶えたいという想いもあった。

「土間、眺めの良いキッチン、広いバスルーム、ガラススチールの間仕切り、パーケットフローリングの床、水廻りにはサブウェイタイルを…という風に、間取りから素材、ディテールまで、やりたいアイデアがたくさんありました。最初は表面上のこだわりが多かったのですが、ストレートデザインラボラトリーとプランをやりとりするうちに、“どう暮らしたいのか”を考えるようになっていったんです。そうやって今の暮らしを見つめ直した時、ワンルームでいいんじゃないか?という思いに至って、最終的に行き着いたのは『国立ハウス』でした」。

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『国立ハウス』は、約16㎡のワンフロアを3層重ねた、延床面積が50㎡に満たない小住宅。そのスケールから、住まいに設えられた要素は最低限。余計なものを盛り込めないからこそ、流行に左右されず、長く親しみを持って使える、シンプルでベーシックな空間を目指してつくられた家だ。家づくり時点での I さんは独身だが、今後、結婚をして家族が増えることも考えられ、趣味嗜好だけでなく、ライフスタイルもまだまだ変わっていく可能性に満ちている。今からフル装備をしなくても、必要なものを、必要な時に足していけばいい。表層も、その時々の暮らし方によって変えていけばいい。ミニマムゆえに多くの余白を備えた『国立ハウス』のプランは、家具好き、もの好きの I さんのライフスタイルにもフィットするものだった。そうして、戸建てである『国立ハウス』のプランを平面展開した、現在のプランができあがった。 

玄関を入ると、悠々と広がる土間空間。片側には、床置きされたバスタブ。その奥にはシャワーブースと洗面台が並ぶ。反対側の壁際にはデスクが置かれ、中央には小さなテーブルが置かれている。ここはワークスペースであり、ハンモックで寛いだりするセカンドリビング的な空間であり、カーテンを開けて入浴すれば、この土間空間全体がバスルームとなる。小さな開口が開けられた壁の先はベッドスペースとウォークインクローゼット。その先、ひとまわり大きな開口が開けられた壁の向こうにはリビング・ダイニング・キッチンがあり、窓からの開放的な眺めが広がっている。大まかに3つのスペースに分けられた空間をつなぐのは、土間床の通路と本棚。土間床はベランダに面した窓辺まで続いており、縁側のような雰囲気も醸し出している。

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「ものが多いので、ごちゃごちゃしてしまうかなと思っていたのですが、壁の開口部が高めの位置に設けられているので、空間がすっきりして見えます。ワンルームスタイルですが、適度な籠もり感と開放感があって心地いい。友人をたくさん招いた時も、さまざま居場所があるので、窮屈にならず快適に過ごせました」。

ステンレスフレームの質素なキッチンやグレー目地の白タイル壁は『国立ハウス』を踏襲しているが、リビング・ダイニング・キッチンの床は幅広のフローリング、ベッドスペースの床はサイザル麻と、 I さんの好みでセレクト。コンクリート躯体を露出させた壁と天井と梁は、部分ごとに素地と白塗装に仕上げを変えている。「あんまり奇麗に仕上げ過ぎると、浮いてしまう家具もある。逆にラフにし過ぎても、空間自体がインテリア性を主張してしまう。今は良くても、いずれ飽きがきてしまうかもというアドバイスを受け、どちらにも偏りすぎないラインを狙いました」。

住まい手の今現在の感性や暮らしを受け止めながらも、先々の変化にも柔軟に応える、フレキシビリティのある空間。 I さんの長年の想いが結実した住まいは、今の喜びだけでなく、未来への楽しみも備えている。「家づくりを終えての感想?…そうですね、10年後にまた家づくりがしてみたいです。この家をリノベーションするのもいいし、でもこの空間も気に入っているので、二軒目へトライすることも画策しています」と笑顔で話す I さん。10年越しで叶えた I さんの家づくり計画は、まだ第一段階を終えたに過ぎないのかもしれない。

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暮らしのワンシーンを丁寧に、日常を慈しむ。 
非日常感がもたらす寛ぎの時間

玄関を入り、ふわりと漂う爽やかな香りとともに感じたのは、澄みきった空気。大きな家具は、北欧アンティークのソファとカフェテーブルだけ。さりげなく飾られた器や花、絵画以外にほとんどものがないリビングには、初春の穏やかな日差しが燦々と注いでいる。あたたかい日だまりの中で、窓外に広がる都心の空を眺めながら過ごす静かな時間。それは、なんと贅沢で豊かなひとときだろう。

「どんな家にしたいのかと聞かれた時、思い浮かんだのは軽井沢の万平ホテル。昭和初期に建てられた和洋折衷なデザインのクラシックホテルで、あんな空間が良いと伝えました。その時は、その理由を深く考えていなかったのですが、こうしてでき上がった空間に身を置いてみて、ホテルで過ごす時のような非日常感が暮らしにほしかったのだと気づきました」。 そう話すのは、この家に住むUさん。 お茶会のお稽古帰りとのことで、和装で出迎えてくれたUさんは、淡い桃色の小紋に若草色の帯揚と帯締め、紅色の帯という装い。 ほのかに和の風情が漂う空間に、とてもよく似合っている。

straight design lab | nishikata flat

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Uさんが暮らすのは、文京区にあるマンション。築年数は古いが、駅近にあり、昭和クラシックなエントランスロビーや吹き抜けのホール、行き届いた管理状態など、ヴィンテージと呼ぶに相応しい佇まい。窓から見える景色が開けているところと、風が通り抜ける清々しさが気に入って購入したという。

広さが90㎡弱ある住まいは、そのゆとりを活かして、パブリックなリビング・ダイニングとセミオープンのキッチン、ベッドルームとプライベートなリビングルーム、予備室という、滞在型ホテルのようなプランにリノベーション。リビング・ダイニングとキッチンの間や、リビングルームの入口、ベッドルームの間仕切りには、Uさんが見つけてきたという日本の古建具を用いた。白壁と無垢フローリングで構成されたシンプルなインテリアに、格子窓が映えている。そこへ北欧アンティーク家具が設えられた様は、和風というよりもジャポニズム。外国人が和のエッセンスを住まいに取り入れたら…といった雰囲気だ。 

「趣味で着付けをやっていることもあり、友人たちに着付けができるスペースがほしいという気持ちはありました。そういった、友人を招きやすい家にしたいと思っていたんです。一方で、ここで暮らす私自身も、招かれた客人のように寛ぎたい気持ちがあったのでしょう。仕事が忙しくて、平日は朝に家を出たら夜遅くに帰ってくるだけの生活ですし、癒しのある空間を求めていたんですね、きっと」。

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東側にある寝室の窓の外は高い建物があまりなく、そこから眺める朝の空が気持ちいいとUさんは話す。夜は、プライベートリビングで間接照明を灯し、ちょっとお酒を飲みながら夜景を眺める。休日の午後は、南に面したリビングの日だまりの中でお茶を楽しむ。そんな風に、場所それぞれでの寛ぎ方を楽しんでいるという。

ともすれば、ひとり暮らしには持て余してしまいそうなスケールの住まいだが、暮らしのシーンをあえて切り離したことが、空間にリズムをつくりだす結果に。同時に、どこかひとつだけの場所を引き立たせるのではなく、それぞれの場所を“ハレの間”として仕立てることで、何でもない日常のシーンすらも特別な時間のように感じられる、“非日常感”が漂う住まいを成立させている。 

キッチンをセミオープン型にしたことも、仕事から疲れて帰って、洗い物が目に入ったのでは寛げないだろうという設計者の配慮から。かつ、元々は窓もなく狭いスペースだったキッチンを、陽当たりのよい位置へ移動させて広さを確保し、キッチンもひとつの“ハレの間”として、そこで家事をする時間も楽しめるようにしている。 バスルームは、防水面への考慮からユニットバスを選んだが、洗面カウンターをタイルで仕上げて、ホテルライクなサニタリーに仕上げている。

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straight design lab | nishikata flat

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「空間が広いので、こだわるところにはこだわり、既存を活かせる部分は活かして、コストバランスを考えてもらいました。私が化学物質過敏症であることもあって、床は無垢のパイン材、リビングルームとベッドルームの壁はホタテ漆喰、その他の塗装には揮発物質の少ない塗料を使ってもらうなど、素材には特にこだわりました」。都心のマンションながら、まるで森の中にいるような澄み切った空気が漂うのは、消臭や調湿性に優れた自然素材によるもの。この空気も、この家の“非日常感”を高める一因になっているようだ。 

Uさんの住まいへは初めて、しかもインタビューのために訪れた身でありながら、そのホスピタリティ溢れる空気感に、すっかり寛いでしまった。それは、この空間が醸し出すものでも、住まい手であるUさん自身が醸し出すものでもあるように思った。家の各所に飾られた草花や器にも、潤いや華がある空間の豊かさを知る、Uさんの暮らしへの美学が伺える。忙しい日常を送っていても、“暮らしを丁寧に楽しむ”はできることを教えてくれる住まいだ。

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